やさしい眩暈
「―――レイラ」



歌い終えた声が、美しい音色で私の名を呼ぶ。



私は目をあげた。


視線が静かに絡み合う。



リヒトが薄く唇を開いて、囁くように言った。




「―――今日で最後だ」




わけが分からなくて、私はぼんやりとリヒトを見つめ返す。



リヒトは静かに繰り返した。




「お前と会うのは、今日が最後だ。俺は、もう二度と、お前を呼ばない」



「え…………?」




自分の声がどこか遠くから聞こえた。


リヒトの言葉が頭の中をぐるぐると駆け巡る。



―――今日で最後だ。


―――もう二度とお前を呼ばない。



その言葉があらわす意味をやっと理解できたとき、



…………私の頭は真っ白に、

そして目の前は真っ黒に染まった。




「………どう、して?」



かろうじてそう訊ねる。


リヒトは温度のない瞳で私の視線を受け止め、答えた。



「もう、お前は要らないからだよ」



―――イラナイ。


オマエハ イラナイ。



胸の真ん中を深々と突き刺されたような気がした。



茫然とする私を、リヒトの眼差しにが怖いほどまっすぐに射抜く。




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