やさしい眩暈
その言葉は、深く深く、奥底まで私の心をえぐる。



―――吐きそうだ。


口許をおさえようと上げた手が、おもしろいくらいにぶるぶる震えていた。



「………なんで、要らなくなったの?」



リヒトが不機嫌そうに顔を歪めたけれど、かまわずに私はすがり続ける。



「なにが駄目なの? 私、なにか余計なことした? ねえ、教えてよ………全部なおすから」


「…………」



リヒトは薄く唇を開いてから、それでも何も言わずに、冷然と私を見下ろしている。



「お願い、教えて―――駄目なところは絶対に変えるから。お願い、ねえ、お願い………」



王に許しを乞うように、

神に祈りを捧げるように、


私は瞼を閉じてリヒトにすがり、懇願しつづけた。



それでも、リヒトはまるで何も聞こえていないかのように、指先ひとつ、ぴくりとも動かない。



「リヒト」



喉から出た私の声は、捨てられた犬のようだった。


そのことにぞっと背筋が凍る。



―――捨てられたりしたら、私はもう、生きていけない。


リヒトという光を失ったら、私の世界は暗闇に沈んで、空気は淀んで、私は死んでしまう。




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