やさしい眩暈
「ううん、行ってない。ルイは?」


『俺もまだです。高校の同級生と会ったりしてたら、なかなかタイミングなくて』


「そうなんだ。私はなんか外に出るの面倒で……寒いし」


『あはは、レイラさんらしい』



なんでもない世間話。


それでも、ルイからの電話を楽しみにしている自分を認めざるを得ない。



『俺、明日そっちに帰ります』



ルイが唐突にそう言った。


なぜだかどきっとしてしまう。

私は必死で何気なさを装い、「へえ、そうなんだ」と相づちを打った。



「でも、来週までゆっくりするとか言ってなかった?」


『そうなんですけど………まあ、実家にいてもだらだらしちゃうだけだし』


「ああ、それは分かるかも」


『それに、レイラさんのことも心配だし』


「………」



思わず返事に窮してしまった。



「………なに言ってんの。もう大丈夫だよ」


『ほんとに?』


「ほんとに。だから、ゆっくりしてきなよ」



せっかく帰省したのなら、少しでも長くいてあげたほうが、ルイの家族も嬉しいだろう。


そう思って言ったのに、ルイは『でも』と言い募る。



『そろそろ我慢できなくなってきたから』


「我慢?」



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