やさしい眩暈
『レイラさんの顔、早く見たい』



冗談らしくも、悪戯っぽくもなく、真剣な声音で囁きかけてくる言葉。



「…………ばか」



私は返事に困ってしまって、そんな答えしかできない。



『とにかく明日、昼過ぎには戻りますから。レイラさん、予定は空いてますか?』


「え? うん、まあ」



どうして、とは問い返せない、ずるい私。



『よかった。じゃあ、迎えに行くんで、待っててくださいね』


「え、迎え? どこに………」


『それはお楽しみってことで。じゃ、また明日』


「ちょっと、ルイ?」



私の言葉にろくに答えず、ルイは通話を切ってしまった。



しばらく携帯電話を片手にぼんやりと窓を眺めていた私は、やっと我に返った。


立ち上がってクローゼットの前に立ち、明日着ていく服について考えを巡らす。


そうしながら、明日のことを楽しみにしている自分に気がついて、嫌気が差した。



リヒトのことでこれだけ消沈していながら、ルイからの誘いに胸を躍らせるなんて、本当に不誠実で最低だ。



そう思いながらも、私は明日の準備を淡々と進めた。



それから、ちゃんと食べていないとルイに叱られそうなので、タッパーにつめて冷蔵庫に保管してあった料理を口の中に押し込んだ。



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