やさしい眩暈
私は中吉で、ルイは吉。



「………普通だね」


「めっちゃ普通ですね」



ぽそりと呟いてから、私たちは思わず、顔を見合わせて噴き出した。


ルイは小さく笑い声をあげながらおみくじを見つめている。



「いいんですよ、『普通』で。『普通』って、素晴らしいことじゃないですか」



歌うように軽やかな口調で言ったルイは、


「うわ、手がかじかんで結べない」


と情けない声をあげながら、近くにあった木の枝におみくじを結びつけた。



「―――そうだよね。『普通』でいいんだよね………」



私は独り言のように呟いて、凍えてぎこちなく動く指で、ルイのすぐ隣に自分のおみくじを結んだ。



私たちは砂利道を並んでゆっくりと歩き、鳥居のほうへと向かう。


なんとなく会話がやみ、ざり、ざりという小石を踏みしめる音がやけに目立った。



鳥居をくぐり、振り向いて一礼する。



「今年もいい一年になりますように」



ルイの呟きが聞こえて、その『普通』の一言が胸に沁みた。



今年もいい一年に、と何気なく祈れるルイの心は、なんて穏やかで美しいんだろう。



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