やさしい眩暈
「―――ありがとう、嬉しいよ」



精一杯の誠意をこめてそう答える。


ルイは小さく頷いてから、深く息をついた。



「あーあ………なんで俺、進学なんて選んじゃったんだろう」


「え?」



私は顔をあげて訊き返した。


ルイが眉をさげて情けない顔をしている。



「早く大人になりたいとか言って、俺、大学院行くから、あと2年も学生ですよ………こんなことなら就職にしとけばよかった」


「なんで? 大学院行くなんて、すごいことだよ」


「でも、レイラさんは社会人でしょ。レイラさんから見たら、学生なんて子どもですよね」



ルイが本当に残念そうに言うので、私はその鼻をぴんと指先で弾いた。



「いたっ」


「なに馬鹿なこと言ってるの。そんなこと思わないよ。ルイは学生だけど、私なんかよりずっとしっかりしてるし、大人だと思う」


「そうかなあ………」


「そうだよ。それに、ルイは理系なんだから、院に行っといたほうが就職も有利でしょう」


「それはそうですけど」


「だから、あと2年、勉強がんばってね。応援してるから」



にこっと笑ってそう言うと、ルイも微笑んで頷いた。



「そうですよね。俺、やりたい仕事あるから、院でちゃんと専門知識つけようって思ってるんでした。がんばります」


「そうなの? やりたい仕事って?」


「それは………」



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