やさしい眩暈
*
「―――レイラ」
愛しい声が、冷たく私を呼ぶ。
それでも、震えがくるほどの喜びを感じながら、私はうっとりと目を開いてリヒトを見た。
熱の余韻が残る瞼が重い。
「なに? リヒト」
愛しい名前を呼ぶ私の声は、自分のものではないかのように甘い。
月夜の露に濡れたような美しい瞳が私を見つめていた。
「お前さ、明日の夜、ヒマ?」
私は「うん」と即答した。
明日は久しぶりにバイトが休みで、いつものように私は何ひとつ予定など入れていなかった。
リヒトはさっき脱ぎ捨てたばかりの服を身につけて、
「早く着ろよ」
と私の下着を放り投げるようにしてこちらに寄越した。
たったそれだけのことで、泣きたいくらいに嬉しい。
「ありがと………」
私の呟きが聞こえたのかどうなのか、リヒトはいつものように、流れるような動作で煙草に火をつけた。
一服してから唇に煙草を挟んで、くゆる煙に微かに眉をひそめながら、すらりとした右腕を伸ばして、かたわらのギターを手にとった。
アルペジオを奏でるリヒトの指に目を奪われる。
リヒトが歌い出すと、涙が滲みそうになった。
「―――それ、新曲?」
リヒトが歌い終えると、私はベッドの上に腰かけたまま、ひっそりと訊ねた。