やさしい眩暈
リヒトの顔が、真昼の光ように明るい、真っ白なライトに照らされる。



ゆるく波うつ長い髪に隠されて、表情は見えない。


それでも、その美しさは際立っていた。

歓声がやまない。



他のメンバーたちも所定の位置につき、確かめるように音を出す。


本当に、全員がステージ映えする容姿をしている。


長身のリヒトとハマさん、そしてキイチくんが並んで立つと、ステージがひどく狭く見えた。


ドラムのトーマも大柄なので、奥行きまで小さく感じられる。



後ろのほうでおしゃべりに興じていた若い女の子たちが、歓声につられたように前を見て、悲鳴のような声があがった。


彼女たちは手を取り合って前のほうに突進していく。



見た目で騒がれるのはいつものことだ。


でも、今はその外見に惹かれている彼女たちも、Dizzinessの演奏を聴けばきっと、彼らの音楽にも心を奪われるはずだ。



リヒトは何もしゃべらずに、軽く俯いて足下のエフェクターを足でいじっている。



ベースのハマさんがマイクに顔を近づけた。


バンドの中では唯一社交性のあるハマさんが、リヒトの代わりにいつもMCをするのだ。



「―――どうも、Dizzinessです」



小さく微笑みながら低い声でハマさんが言うと、割れんばかりの歓声が応えた。





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