やさしい眩暈
トリのバンドが終わると、私はハマさんに言われた通り、ライブハウスの裏口側に回った。


出待ちをしているらしい女の子たちがたくさんいる。



私は少し離れたところのガードレールに腰かけて待つことにした。



しばらくすると裏口のドアが開き、背の高い男が二人出てきた。


キイチくんとトーマだ。


彼らが振り向いて奥に何か声をかける。

すると、続いてハマさん、リヒトが姿を現した。


180を越える長身の四人が並んで歩いていると、圧倒されるほどの雰囲気があった。



たむろしていた女の子たちの中の10人くらいが、一斉に駆け寄る。


Dizzinessのファンなのだろう。

もしかしたら、今夜ファンになった子たちもいるのかもしれない。



「めっちゃかっこよかったです! もう泣きそうでした!」


「新曲も何個かありましたね! もしかして、もうすぐアルバム出たりしますか?」



女の子たちに囲まれて、人当たりのいいハマさんとキイチくんが対応している。


その後ろで、リヒトとトーマは黙って煙草を吸っていた。


女の子たちがちらちらと見ているのは、やはりリヒトだ。



ライブで着ていたシャツの上に、薄手のロングコートを羽織り、左手はポケットに突っ込んでいる。


そんな何気ない立ち姿でさえ、周りの目を惹きつけてやまない魅力があった。




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