やさしい眩暈
メンバーたちがファンと話している間、私はガードレールにもたれたまま、ぼんやりとそれを眺めていた。



すると、派手なメイクとファッションの、モデルのように綺麗な女の子二人組が、リヒトに話しかけはじめた。


何を話しているのかは分からないけど、小さく頷くリヒトの表情は、素っ気ないままで変わらない。


二言、三言会話してから、リヒトたちが動き出した。

リヒトに話しかけた女の子たちも一緒に歩き出したので、私は少し驚く。


もしかしたら関係者なのかな………いや、たぶん違う。

リヒトが気に入ったから、打ち上げに誘ったのだろう。


そんなことを考えていると、ハマさんと目が合い、手招きされた。


打ち上げの会場に向かうんだろうと思って、私は彼らの後を追った。



「レイラ、来てたんだな」



トーマが私を見つけて話しかけてくる。



トーマはリヒトと私と同い年で、一番最初にリヒトが誘ったメンバーだ。


たまたま私と一緒に見に行ったライブで、あるバンドでドラムを叩いていたトーマを見て、リヒトが気に入って声をかけたのだ。

そのこともあって、トーマは私とも付き合いが長い。


トーマは茶色の短髪をかきあげて、「久しぶりだな」と言った。



「うん。前のライブのときはバイトが抜けられなくて」


「ふうん。喫茶店だったっけ」


「うん」




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