やさしい眩暈
こういう場にいるとよく、大学時代のことを思い出す。


サークルの飲み会で、リヒトと私は隣に座ることが多かった。

申し合わせたわけではなかったけど、どちらからともなく。


部員たちの間でも、なんとなくそれが当たり前のようになっていって、

私が飲み会の席につくと、いつも時間ぎりぎりか、遅れてやって来るリヒトのために、私の隣は空けておくという暗黙の了解があるようだった。


大学に入って3ヶ月くらいが過ぎたころ。

バイトで疲れていたせいか、私がいつになく酔ってしまったことがあった。


気がついたら、隣に座っていたリヒトの肩に頭を預けてうとうとしていた。


ごめん、と謝って顔を上げると、リヒトがくすりと笑った。


そして、リヒトは私の手を引いて立ち上がらせて、人目のない場所に移動すると、いきなりキスをしてきた。


私は驚いたけれど、抵抗はしなかった。

その頃にはもう、私はリヒトに心を奪われていたから。


キスが深くなって、私は甘い眩暈に全身を冒された。



そのまま飲み会を抜けてリヒトの部屋に行って、私はリヒトに全てを捧げた。



今なら、もう死んでもいい。


そう思えるくらい、私は幸福だった。




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