やさしい眩暈
リヒトの女癖が悪いということに気づいたのは、それから間もなくだった。


面倒が起こるのは嫌だったのか、同じサークルのメンバーにはさすがに手を出さなかったけど、

ライブで知り合った中に好みの女の子がいると、誘いをかける。


リヒトが見つめるだけで、たった一言声をかけるだけで、リヒトはいとも簡単にその女の子を自分の意のままに扱うことができた。


リヒトの視線から逃れられる女なんて、いないんじゃないかな。

そんなふうに思えてくるくらい、リヒトの光は鮮烈だった。



私は定期的にリヒトに呼び出され、リヒトのギターを聴き、ご飯を作ってあげて、一緒に食べて、夜には抱き合った。


その間にも、リヒトは色んな女の子に手を出していた。


初めのころには、他の女に触れた手で触れられることに複雑な思いもあった。

でも、リヒトに疎まれたくなくて、嫌われたくなくて、なにも言わなかった。


なにより、リヒトの美しい瞳に見つめられると、その甘い声で名前を呼ばれると、他のことなんかどうでもいいと思えてきて、なにも言えなくなった。



「リヒトさんとレイラさんて、どうやって付き合いだしたの?」



唐突にキイチくんがそんなことを訊ねてきた。


私は我に返って、キイチくんを見つめ返す。




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