やさしい眩暈
当然だよね、と私はひそかに彼女に同情する。

リヒトに誘われて喜んでついてきたのだろうに、あんな冷たい言葉をかけられて、無情な仕打ちを受けたのだ。


でも、心のどこかに優越感が湧き上がるのを、私は自覚せずにはいられなかった。


性格悪いな、と自分でも思うけど、どうしようもない。


リヒトに関することになると、私はどうしようもなく非情で愚かになってしまうのだ。



「リヒトー。……ったくお前は………」



私とリヒトの向かいで飲んでいたハマさんが、呆れたように肩を竦める。



「またファンが減ったぞ?」


「いいんだよ、べつに」



リヒトは薄く笑って平然と答えた。



「ああいう馬鹿な女が一人や二人減ったって、どうってことないだろ。俺たちなら、放っといても勝手にファンがつく。しかも、本当に音楽を分かってる奴らが」



なんて傲慢なんだろう。


傲慢で、冷酷。

リヒトは本当にひどい男だ。


それでも私は、リヒトほど魅力的な人間を知らない。


有無を言わさずに周りを惹きつける、強烈な光。

強大な引力をもった存在。


その輝きに一度とらわれてしまえば、たやすく逃れることなどできない。


二度とリヒトから目を離せない。





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