RE
「れん君……。」
「はっ?」
わけの分からないという顔であたしを見るれん君は、やっぱり何処か他と違う輝きを持っているような気がした。
けして意地悪じゃない、優しくてやわらかい部分が沢山ある。不思議とそう感じた。
「あ、すいません。」
「えっと、2年?」
「……はい。」
「どうも、REで~す。」
明るい彼は悪い噂を笑い飛ばした。
それは、大きい器を持っている感じ。
「俺の事知ってるでしょ?」
「あ、はい。」
「……名前何?」
とても安心する香りがした。
でも後でよく考えたら、初対面なのになんて早いシチュエーションだろう。
まあ、彼だから良かった。
「……森口千尋です。」
「千尋?」
「あ…………。」
多分、顔が赤かった。
異性に名前で呼ばれるのが父以来だった。
彼の名前は、知っていた。
「遠藤先輩……。」
声は小さいと思う。
普段からそうだけど
今日は、もっと小さかった。
「怖くない?俺。」
「全然ッ……。」
「あ、そ。じゃあね。」
彼は名前だけ聞いて、階段を駆け上がって行ってしまった。
これから始まる事に、あたしはまだ気付いてなかった。
知らない事だらけのスタート。