闇桜〜銀色のキミに恋をした〜
じわりと滲んだ涙をハンカチで押さえていると、誰かが入ってくる気配がした。
「奈緒」
いつもは愛おしいその声も、今はあたしを悲しくさせるだけ。
プイッとそっぽを向く。
「奈緒、こっち向けって」
「やだ。どうせあたしは可愛くないし」
つい嫌味が口をついてしまう。
確かに、諒真さんのナンパ癖は仕方ないかもしれない。
これまでもそれでたくさん喧嘩したし。
でも、結婚式の時くらい我慢してくれてもいいと思う。
「なーおー」
「ふんっだ」
顔をのぞき込もうとしてくる諒真さんから、思いっきり顔をそむける。
今は顔も見たくない。
あまりにしつこいので、無視して立ち上がったとき。