闇桜〜銀色のキミに恋をした〜
「──ってぇ!?」
痛みでその腕が緩んだ隙に飛び退き、距離を取る。
諒真さんは、さらに赤くなった頬を押さえながらあたしに視線を移した。
「……あれ?奈緒?何してんだ?」
な、何してんだ、って…………
「諒真さんが……キス、するから…………」
「はぁ?俺、なんもしてねぇけど?」
「…………ですよね」
覚えてないとは思った。
倉庫に初めて行った時も、そうだったから。
あたしを無理やり連れ込んだくせに『出ていけ』とか罵って。
酒癖悪いのは、承知済みだったけど……
いきなりキスされるなんて、思わないし!
「ん……?奈緒すげぇ顔赤いけど、風邪か?」
「誰のせいだと思ってるのよ…………」
惚ける諒真さんをジロリと睨みつけ、あたしはそそくさとお風呂を探しに向かった。