幸せの定義──君と僕の宝物──
「ちょっとな…。」

「もしかして、ハルのせい…?」

ハルがためらいがちに呟いた。

「ハルのせいじゃねぇよ。最近いろいろあってな。でも大丈夫だ。」

リュウが答えると、ハルは腕にギュッと力を込めてリュウを抱きしめた。

「とーちゃん…。大人だって、つらい時はつらいって言っていいんだよ。泣きたい時は泣いていいんだよ。そうしないと、とーちゃんはずっとつらいままでしょ?誰にも聞いてもらえないなら、ハルが聞いてあげる。泣きたい時は、ハルがとーちゃんを抱きしめてあげる。」

いつか自分がアユミに言った言葉のようだと、リュウは苦笑いをした。

いつの間にハルは、こんなに大人になっていたんだろう?

どうしてハルには、自分の気持ちがわかるんだろう?

ハルは、こんな自分のどこが良くて、まっすぐに好きだと言い続けるんだろう?

「バーカ…。オレは泣かねぇよ…。」

リュウはハルの華奢な手を握り、涙が溢れそうになるのをハルに気付かれないように、静かに呟いた。

「でも…ありがとな…ハル…。」

(なんだ…。あったけーな…。)

リュウは心が温かくなるのを感じながら、ハルの手を握ったまま眠った。

それはとても心地よく、眠りの中でさえずっと頭から離れなかったトモとアユミの事を忘れさせてくれるほど、深い眠りだった。


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