幸せの定義──君と僕の宝物──
「片桐さん…単刀直入に言うわね。」

ユウもレナも、何を言われるのかと緊張で顔を強ばらせている。

山田先生は右手に持っていたペンをカルテの上にポンと置いて、深刻そうに口を開いた。

「切迫早産です。子宮口も少し開いてる。」

「えっ?!」

「切迫…早産…?」

ユウとレナが顔を見合わせると、山田先生はイスごと体をクルリとこちらに向けて、腕組みをした。

「分かりやすく言うとね、軽い陣痛が起こっているのと同じ状態なの。お腹、硬く感じたでしょう?」

「ハイ…。」

「それは子宮が収縮して、赤ちゃんを外に出そうとしてるの。もちろん軽いものだから、すぐに生まれると言う事はないけど…まずいのはむしろ、子宮口が開いてる事。子宮が収縮して、赤ちゃんを押し出そうとして開いたのね。まだ33週目に入ったところでこの状態は危険だから…片桐さん、すぐ入院して下さい。」

「えっ…入院…?!」

山田先生の言葉に、レナは呆然としている。

「とりあえず入院して安静にしていないとね。お腹の張りが治まらないようなら、投薬治療もする事になります。」


それから紹介書を書いてもらい、ユウとレナは山田先生に指示されたように、中央病院へ向かった。

山田先生のクリニックでは部屋数が少なく、分娩後の産婦や分娩予定の妊婦が多いため、長期に渡って入院する事ができないそうだ。

ユウは車を運転しながら、助手席で不安そうにしているレナの横顔をチラリと見た。

(レナはただでさえ病院が苦手だし…初めての妊娠で不安もいっぱいなのに…。)

ユウは右手でハンドルを握り、左手でレナの頭を優しく撫でた。

「すぐに気付いて診てもらって良かったな。先生の言う通りにすれば大丈夫だよ、レナ。」

「うん…。」


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