幸せの定義──君と僕の宝物──
「なんだそれ…。有り得ねぇ…。オレがハルを好きになるなんて、ぜってぇ有り得ねぇ…。」

「好きになるとは言ってないけど。」

ルリカは事も無げにそう言うと、笑ってタバコに火をつけた。

「リュウトさぁ…アンタの気持ちもわかるけど…ハルは誰よりもまっすぐアンタを見てきたと思うよ。そりゃあまだハルは若いし、今すぐどうこうしろとは言わないけど…。」

「どうこうって…。」

「少しでもハルの気持ちがわかるなら、身内とか歳の差とか関係なく、ちゃんと向き合ってやってよ。どうするかはそれから決めてもいいんじゃない?」

「母親の言う言葉かよ…。」

ルリカは優しい目をして微笑んだ。

「母親だから言うんだよ。同じ女だし…同じような思いしたからわかる事もあるよ。」

「ハルの父親の事か…。」

「そう。ホントは好きになっちゃいけない人だったからね…。アンタも昔、そんな事あったよね?」

「ああ…昔の話だ。」

「なんで手の届かない人を好きになるんだろって、二人で話したね。結局、そういうのをなんて言うんだっけ?」

「…Cry for the moonか。」

「何それ?」

「ないものねだりの事だよ。」

昔とは違いリュウが当たり前のようにさらりと答えると、ルリカはチッと舌打ちをした。

「…ちょっと海外生活長かったからって、カッコつけんなよ、激ヤンベーシスト。」

「うるせぇ…。」




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