幸せの定義──君と僕の宝物──
ユウが入院準備の荷物を持って病室に足を踏み入れた時、レナは子宮の収縮の様子を調べるモニター機器のパッドをお腹につけられて、ベッドに横たわっていた。

「レナ、荷物持ってきたよ。」

「ありがと…。」

ユウはバッグからタオルやパジャマなどを取り出してロッカーにしまう。

「ごめんね。」

「謝る事なんかないって。そう言えば結婚する前にオレが事故にあって入院してた時、レナいつも奥さんみたいに身の回りの世話してくれたよな。」

ユウはレナを不安にさせまいと、なんともなさそうな顔をして笑う。

「できるだけ顔出すようにするからさ。とにかくなんにも考えないでのんびりしてな。」

バッグから取り出した音楽プレイヤーを枕元に置いて、ユウは優しくレナの頭を撫でた。

「安静って、ずっと横になってなきゃいけないんだって。座ってると腹圧がかかるから。」

「そっか…それは退屈だな。テレビカードとイヤホン、後で売店に行って買ってくるよ。」

荷物の片付けを終えたユウは、テレビカードとイヤホンを買うために売店へ足を運んだ。

できれば四六時中でもレナのそばについていてやりたいが、そういうわけにもいかない。

医師の話では、入院生活は妊娠37週目に入る頃まで続くと言う。

苦手な病院のベッドで、長い時間をひとり横になって過ごさなければいけないレナの気が少しでも紛れたらと、パズル雑誌とペンも買う事にした。



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