幸せの定義──君と僕の宝物──
その頃。

ハルは男の子と一緒に公園のベンチに座っていた。

もうかれこれ、1時間半ほどもそうしている。

隣に座っているのは、ヨウスケと言う隣のクラスの男子で、高校に入学してすぐの頃から何度となく“付き合おう”と言われている。

ハルはヨウスケと、学校の友達の事や好きな音楽の話など、他愛もない会話をして時間を潰していた。

ヨウスケと会話しながらも、ハルはリュウの事を考えていた。

(はぁ…。やっぱり、顔合わせづらい…。帰りたくないな…。)

時計を見ると、もう9時半になろうといる。

(ママ、心配してるかな…。とーちゃんは…ハルの心配なんか、しないよね…。)

ハルがぼんやりと考えていると、ヨウスケがハルの顔を覗き込んだ。

「宮原…どうかした?」

「…ううん、なんでもない…。」

ヨウスケに目をじっと見つめられ、ハルは慌てて目をそらした。

「なぁ…宮原…。」

ヨウスケがハルの肩に手を回した。

ハルは驚いて、身動きができない。

「オレ、宮原の事、マジだから。」

「……。」

「オレと付き合おうよ。な?」

(とーちゃんじゃない人と付き合えば…とーちゃんの事、忘れられるのかな…?)

ハルはヨウスケに肩を抱かれながら、リュウの顔を思い浮かべた。

小さい頃から大好きなリュウの笑った顔や、ハルがわがままを言った時の少し困った顔がハルの脳裏をよぎる。

(どんなに好きになっても…とーちゃんはこの先もずっと、ハルの事なんか…好きになってくれない…。)

「好きだよ、宮原。」

ヨウスケがハルの顔に、ゆっくりと顔を近付けた。

「っ…!!」

(やっぱやだ!!とーちゃんじゃない人となんて…!!)


< 130 / 241 >

この作品をシェア

pagetop