幸せの定義──君と僕の宝物──
ハルが慌てて逃れようとしても、ヨウスケは強い力でハルの肩を抱き寄せる。

「やっ…やだ…!離して!!」

ハルは身をよじって必死で抵抗した。

「いいじゃん…キス、しようよ…。」

ヨウスケが強引にハルにキスしようとさらに顔を近付けた時。

「ハル!!」

少し涙ぐんだハルの目に、向こうの方から走って来る影が見えた。

(……とーちゃん…?)

リュウがヨウスケの肩を強い力で掴んだ。

「…ハルに手ぇ出すな。」

低く呟いたリュウの殺気に恐れおののいたヨウスケは、急いでハルから手を離し、慌てて走り去って行った。

リュウはハルを思いきり抱きしめて、小さく呟く。

「心配させやがって…。」

ハルはリュウの胸に抱かれながら、ポロポロと涙をこぼした。

「なんで…?いいとこだったのに…なんで邪魔するの?」

「嘘つけ…泣いて嫌がってたくせに…。」

「早く彼氏作れって、とーちゃんが言ったんでしょ?!ハルの事なんか、迷惑なんでしょ?!」

泣きながらそう言うハルの髪を、リュウは愛しそうに撫でる。

「迷惑とは言ってねぇだろ…。確かに、彼氏作れとは言ったけどな…好きでもねぇ男と付き合えとは言ってねぇ。」

「だって…やっぱり好きなんだもん…。そうでもしないと…あきらめられないんだもん…。ハルが好きだと…困るんでしょ…?」

リュウはハルの涙を指で拭って、もう一度ハルを抱き寄せた。

「困んねぇよ、バカ…。それより余計な心配させんな。ホラ、帰るぞ。姉貴も心配してる。」

リュウはハルの頭をポンポンとやって、ハルの手を引いてベンチから立ち上がらせた。



< 131 / 241 >

この作品をシェア

pagetop