幸せの定義──君と僕の宝物──
公園からの帰り道、二人はそのまま手を繋いで歩いた。

ハルの手を握りながらリュウはゆっくりとハルの歩幅に合わせて歩く。

「昔、よくこうしてハルと手ぇ繋いで歩いたな…。姉貴に、しょっちゅうハルのお迎えに行かされてな。その度に、だっこしろとかギューッてしろとか…ちゅーしろとか…わがままばっか言ってたんだぞ。」

「ママから聞いた…。」

リュウは懐かしそうに笑って、あの頃とは違うハルの華奢な手を握り直した。

「ハルの手、あの頃はちっちゃかったのに…こんなに大きくなったんだな。」

「だってもう高校生だよ。」

「そうだな…。」

「ハルがちっちゃかった時は、ちゅーしてくれたの?」

「しねぇよ、そんな恥ずかしい事…。」

「今もしてくれないけどね…。」

「ハルがおっきくなったらしてくれるかって聞かれたな…。それはそれでまずいだろうって思ったわ。」

リュウがおかしそうに笑うと、ハルが立ち止まった。

「さっき、キスされそうになって…すごく怖くていやだった…。ハル…とーちゃんじゃない人となんて、やっぱりいやだよ…。」

ハルはそう言って、また涙をこぼした。

リュウは小さくため息をついて、ハルの頭を撫でた。

「無理して急いで大人にならなくていいって言っただろ。ゆっくりでいいんだ。好きでもねぇ男と無理して付き合う必要なんてねぇ。ハルはハルでいい。オレはそう思う。」

ハルは手の甲で涙を拭いながら、小さくうなずいた。

「ハル…とーちゃんの事、ずっと好きでいてもいい?」

「そうだな…。わけのわからん男に引っ掛かるより少しはマシか…。」




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