幸せの定義──君と僕の宝物──
実家に戻ったリュウとハルは、ルリカの用意した夕食を二人で黙って食べた。

ルリカはハルに何も聞かず、食事の用意だけすると自分の部屋に戻って行った。


食事の後、シャワーを浴びて自分の部屋に戻ったリュウがタバコを吸いながらぼんやりしていると、誰かがドアをノックした。

リュウがドアを開けると、入浴を済ませ部屋着に着替えたハルがそこにいた。

「とーちゃん…。」

「…入るか?」

部屋に入ったハルはクッションを抱いてちょこんと座った。

「さっきは…心配掛けてごめんね…。」

「ああ…。オレはともかく、遅くなる時は姉貴に連絡くらいしろよ。心配してたぞ。」

「うん…。」

リュウはまだ長いタバコを灰皿の上でもみ消した。

「あのな、ハル…。オレはハルには幸せになってもらいたいって、昔からずっと思ってる。」

「うん…。」

「優しくて真面目で、ハルの事だけを想って大事にしてくれる男と幸せになって欲しいって、そう思ってたんだけどな…それは、オレの思うハルの幸せであって…ハルにはハルの思う幸せがあるんだって、ユウに言われたんだ。ハルの思う幸せって…なんだ?」

リュウが尋ねると、ハルは顔を上げて、リュウの目をまっすぐに見た。

「その人がとーちゃんだったら、ハルは幸せだよ。ハルはとーちゃんと一緒にいたい。」

「そっか…。ハルは昔からブレねぇなぁ…。」

リュウは少し照れ臭そうに苦笑いを浮かべた。

「でもな…ハルはまだ15だろ?」

「冬には16になるよ。」

「まぁ…そうなんだけどさ。どっちにしても、まだ高校生だしな。オレは30過ぎた大人だし…ハルが大人になる頃にはオレもオッサンだ。」

「とーちゃんはオッサンじゃないよ。」

「あー…昔も言われたな、それ。」

リュウはおかしそうに笑って、ハルの頭を撫でた。


< 133 / 241 >

この作品をシェア

pagetop