幸せの定義──君と僕の宝物──
「オレは急いで大人になろうとして、まともな恋愛してこなかったからな…。ハルと一緒に、ゆっくり学んでくわ。」

「…うん!!」

嬉しそうに抱きつくハルを、リュウは愛しそうに抱きしめた。

「ゆっくりだからな。」

「ちゅーは?」

「ダメ。大人になるまで待ってろ。」

ハルは不服そうに唇を尖らせた。

「この間したのに。」

「あれは事故だ。あんなのキスじゃねぇ。」

「えー…じゃあどういうのがホントのキス?」

やけに大人びた目で見つめるハルの眼差しに、リュウは一瞬怯みそうになった。

「オマエな…。今はまだダメって言ったろ。」

「じゃあ他の人に教えてもらうからいい。」

「バカ…それもダメだ。」

「じゃあ、とーちゃんがして。」

リュウは頭をかきながら、心底弱った顔でハルから目をそらした。

「…バカ。」

リュウは照れ臭そうにそう言って、ほんの一瞬ハルの頬に微かに触れるだけのキスをした。

「もうおしまい?」

「続きはもっと大人になってからな。」

「やっぱり早く大人になりたい…。」


それからリュウとハルは、手を繋いで寄り添って眠った。

今はただそれだけで、心が温かく満たされた。

ハルが大人になる頃には、普通の恋愛を知らなかったリュウの心も、まっすぐに愛し愛される喜びに満ち溢れているのかも知れない。


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