幸せの定義──君と僕の宝物──
翌日、学校から大急ぎで帰ったハルが、リュウの手を引いて“スーパーに買い物に行こう”と言うので、リュウはルリカの車を借りてハルをスーパーに連れて行った。

「急にどうしたんだ?」

「んーとね、今日の晩御飯、ハルが作る。」

ハルはメモを見ながら楽しそうに食材を選ぶ。

「ハル…料理なんかできんのか…?」

「失礼な…。たくさんではないけど、少しはできるよ!」

「へーぇ…。食えるもん作れよ。」

「絶対、おいしいって言わせてやるから…。」

思えば今まで、付き合っても手料理を食べさせてくれる相手なんていなかったなとリュウは思う。

相手の女性を信じて心を開く事ができず、なくしても痛くもなんともないような、体ばっかりの浅い付き合いしかしてこなかった。

初めて好きになった人とアユミを除いて、好きだとかかわいいとか、大事にしたいとか、一緒にいたいと思った相手もいなかった。

(ハルはいっつもオレのために一生懸命だな…そういうとこがかわいいんだよな…。)

ハッキリとした言葉にして好きだとは言わなかったが、どうやらハルを好きらしいと自覚すると、やけにハルがかわいく見えてくるから不思議だ。

好きだと言葉にして言うには、まだおぼろげで曖昧ではあるけれど、ハルへの気持ちは間違いなく愛情だとリュウは思う。

その証拠に、この手でハルを幸せにしてやりたいと、素直に思った。

(よりによってハルだもんなぁ…。でも、ずっと好きだって言ってくれてんだ。そろそろその気持ちを受け止めてやってもいいだろ。)

リュウはハルの背中を見ながら、自分を大事に想ってくれる人を想える事は幸せだと思った。


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