幸せの定義──君と僕の宝物──
リュウが“ダメだ”と返事をするより早くハルが伸び上がって、リュウの唇にハルの柔らかい唇が重なっていた。

「……!」

その瞬間、リュウの胸の鼓動が速くなった。

(な…なんだこれ…?!)

ただ唇が触れただけなのに、身体中の血が熱くなる。

リュウは慌ててハルの肩を掴んだ。

「バカ…。ダメッつったのに…。」

「なんで?とーちゃんからはできないなら、ハルからはしてもいいでしょう?」

「ダメだって…。いろいろハルにはわかんねぇ事情があるんだよ…。」

「何それ?」

ハルは不思議そうに首をかしげた。

(いい大人のオレが15のハル相手に、抑えがきかなくなるからとか、言えねぇっつーの!!完全に犯罪だ!!)

リュウはバツが悪そうにしている。

ハルはリュウにもたれ掛かって、リュウの胸に頬をすり寄せた。

「ちゃんといい子にしてるから…メールとか、電話とか…たまにはしてくれる?」

「そうだな…。そういうの、今までした事なかったわ。オレもやってみるかな…。」




それからリュウは荷物を手に、ハルと一緒に母屋へ向かった。

リビングではルリカとサツキが、お茶を飲みながらテレビを見ていた。

「リュウト、もう行くの?」

「もうすぐトモが迎えに来る。」

リュウはハルと並んで座りルリカの方を見た。

「なぁ姉貴…。ハルが大人になったら、オレがもらっていいか?」

唐突なリュウの言葉に、ルリカとサツキは驚いて顔を見合わせた。

「何、急に…どういう心境の変化があった?」

「いや…。ハルが大人になってもその気があればだけどな…。ハルを幸せにしてやれんの、オレしかいねぇんだってさ。それも幸せかなって思ってな。」


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