幸せの定義──君と僕の宝物──
それからしばらくレナのそばについていたユウが、仕事に行くためイスから立ち上がった。

「ホントはずっといられたらいいんだけど…もうそろそろ行くよ。」

「うん…。」

レナは少し寂しそうにうなずいた。

「今日の歌番組、8時から生放送だから。疲れてなかったらテレビで見てて。」

「わかった…ありがと、ユウ。」

ユウはレナの唇にそっとキスをして、優しく頭を撫でてから病室を後にした。




ユウが仕事に行ってひとりになると、レナは小さくため息をついた。

さっき別れたばかりなのに、ユウがそばにいない事を、もう寂しく思ってしまう。

(今日からしばらく、ユウと離ればなれか…。4週間も離れるの、ユウが事故にあって入院してた時以来かな…。)

病室の中ではもちろん携帯電話を使う事はできないし、携帯電話の使用可能なスペースに行きたくても医師から安静の指示が出ているので、院内を歩き回る事もできない。

(電話もメールもできない…。寂しいな…。)

レナはしばらくぼんやりと窓の外を眺めた後、病室の白い天井を見上げた。

見慣れない病室の天井はとても無機質で、ユウと二人で住み慣れたマンションが途端に恋しくなる。

それでもとにかく今は赤ちゃんのために、医師に言われた通り横になっているしかない。

(私は無理したつもりはなくても、赤ちゃんには負担をかけていたんだな…。)



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