幸せの定義──君と僕の宝物──
7月下旬。

妊娠37週目に入る日に、レナがようやく退院する事になった。

4週間の退屈な入院生活を終えたレナの体は、安静期間に足の筋肉が若干弱った事と、更にお腹が大きくなった事もあって、歩くのも大変そうだ。

住み慣れた部屋に戻ると、レナはいつものようにソファーに座って嬉しそうに笑った。

「やっと帰って来られた。」

「ホントにな。4週間って、こんなに長いんだなって思った。」

ユウも笑ってレナの隣に座る。

「おかえり、レナ。」

「ただいま。ユウ、ありがとう。」

二人が微笑み合って唇を重ねた時、ユウのスマホの着信音が鳴り、二人は驚いて目を開く。

「なんだよもう…。せっかくレナと…。」

ユウはブツブツ文句を言いながら立ち上がり、ポケットからスマホを取り出した。

「ハヤテか。なんだろ?…もしもし?」

「あ、ユウ。今日、奥さん退院だって?」

「うん、今帰って来たとこ。」

「お疲れのとこ悪いな。次の休みにさぁ…。」



電話を終えたユウは、またレナにくっついてソファーに座った。

「ハヤテさん、どうしたの?」

「次の休みに、ハヤテんちに来ないかってさ。ハヤテ、結婚して広い部屋に引っ越しただろ?結婚式の時の演奏のお礼とレナの退院祝いも兼ねてみんなを新居に招待するって。」

「そうなんだ。賑やかになりそうだね。」

「今日は久し振りに、二人っきりでゆっくりしよ。晩飯、レナの好きな物作るよ。」

「ありがと、嬉しいな。ユウの作った御飯、すごく食べたかった。」

レナが嬉しそうに笑うと、ユウはとろけそうな目で愛しそうにレナを見て、ギュッと抱きしめた。

「はぁ…。やっぱり、オレの奥さん世界一かわいい…。」



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