幸せの定義──君と僕の宝物──
それからレナは、ユウが持ってきてくれた音楽プレイヤーで`ALISON´の曲を聴きながら、目を閉じていた。

大好きなユウのギターの音色を聴いていると、ほんの少し不安が和らぐような気がした。

相変わらずお腹の張りは治まらない。

様子を見に来た看護師が、レナのお腹に触れてから、微かに顔をしかめた。

(なんだろう…。)

レナが不安に思っていると、看護師は顔を上げて笑みを浮かべた。

「片桐さん、張り止めのお薬が出てますから、後で持ってきます。食後に忘れず飲んで下さいね。」

「わかりました。」



しばらくすると夕食の時間になり、配膳スタッフがベッドまで夕食の乗ったトレイを運んでテーブルに置いてくれた。

(病院の夕食は6時か…。早いな…。)

いつもより随分早い夕食。

ずっと横になっていた事もあり、食欲がわかない。

それでも食べられるだけは食べようと、レナは妊婦用に薄めの味つけの料理を口に運んだ。

(ユウ…私がいない間の食事、大丈夫かな…。外食ばっかりになるのかも…。)

そう言えば、冷蔵庫の中の食材の事を忘れていた。

おととい買い物に行って、あれこれ買い込んで来たものの、昨日はハヤテの結婚式で外出していたので、買って来た食材はほぼ手付かずのままだった。

(次にユウが来た時に言っておかないと…。)

レナはそんな些細な事を考えながら、キュウリとしらすの酢の物を口に入れた。

ただでさえひとりの食事は味気ないのに、病院のベッドの上でひとりで食べる食事は尚更だ。

(もう食べたくないな…。)

3分の1ほど残して食事を終え、薬を飲んで、再びベッドに横になった。


< 15 / 241 >

この作品をシェア

pagetop