幸せの定義──君と僕の宝物──
夜になりマンションに帰ってくると、リュウは黙ってバスルームに向かった。

リュウはシャワーを浴びながら、みんなの前で嫉妬してタクミに啖呵を切ったり、ハルを抱き寄せたりした事を激しく後悔していた。

(あーもう…カッコわりぃ…。連れてくんじゃなかったな…。)

せっかくリュウと一緒にいたくて来たのに、いつも一人で留守番ばかりではハルがかわいそうだと思って連れて行った。

(タクミに会わせるんじゃなかったな…。アイツ、何考えてるかよくわかんねぇんだよ…。一人で行って早めに帰ってくるとかすれば良かった…。)

リュウは、自分はこんなに嫉妬深かっただろうかと考えながら、バスルームを出た。

タオルで髪を拭きながら、冷蔵庫の中のビールを取り出してリビングに戻ったリュウは、なんとなく気恥ずかしくて、相変わらず黙ったままビールを飲んだ。

ハルが首をかしげながら着替えを用意していると、ポケットの中でスマホの通知音が鳴った。

トーク画面を開いて確認すると、そのメッセージはタクミからで、花火大会の会場近くにある美味しいイタリアンのお店の場所とその詳細だった。

ハルがお礼のメッセージを送ろうと文字を打っている間も、リュウは、もしかしたらまたタクミがハルを口説いているのかも…と気にしながらも、なんともない風を装った。

(気にしすぎか?)

リュウは少しイライラしながらタバコに火をつけビールを煽る。

ハルがタクミにメッセージを送ると同時に、仲の良い女の子から、“浴衣着て彼氏とお祭りに行ったよ!”と画像付きのメッセージが送られてきた。

ハルは友達の浴衣姿を見て“かわいい!!めちゃくちゃ似合ってるよ!!”とメッセージを送る。


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