幸せの定義──君と僕の宝物──
リュウは、ハルがさっきからトークのやり取りをしている相手を確かめたわけでもないのに、勝手にタクミと決めつけて更にイライラしている。

(なんだよ…。オレの前で他の男と連絡取り合うなよ。)

「ハル、早く風呂入れ。」

「…?うん…。」

普段はそんな事言わないのに、やけにイライラしているリュウを不思議に思いながら、ハルはスマホを置いてバスルームに向かった。

ハルがシャワーを浴びている間、リュウは更に自己嫌悪に陥っていた。

(ああ…オレマジでカッコわりぃ…。何嫉妬なんかしてんだよ…。情けねぇな…。)

歳の離れたハルをつまらない嫉妬なんかで縛り付けてどうするんだとか、自分は大人なんだからもっと堂々としていないととか、とりとめもない事をぐるぐると考える。

(気にしたってしょうがねぇ…。ずっと一緒にいるわけにもいかねぇんだし…。だいたい、大人になるまで待ってろって言ったのはオレなのに…。)

まだ若くてかわいいハルが、リュウの言う“大人”になるのを待ちきれなくて、年相応の相手を好きになって離れて行く日がくるかも知れない。

その時はその時でハルの気持ちを大事にして受け止めようと思っていたはずなのに、ハルがもし自分以外の男を好きになったら…と思うだけで、どうしようもないほどの焦りと不安が込み上げた。

できるなら誰にも奪われないように、ハルをいつでも自分のすぐそばに置いておきたい。

(なんだこれ…?これじゃハルが大人になんの待ちきれないのはオレの方じゃねぇか…。)



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