幸せの定義──君と僕の宝物──
ジュエリーショップを出た後、4人はユウの車で百貨店に足を運んだ。

ユウが昨日、リュウに“もうひとつ付き合ってくれるか?”と頼まれた場所だ。

リュウはハルを連れて屋上へ向かった。

いつもは賑わっている場所なのに、今日は人の姿が見当たらない。

「わぁ…すごい!!」

宵闇の広がる屋上で、目の前に広がる夕景にハルは目を輝かせた。

柵に手を掛けて景色に夢中になっているハルの隣で、リュウは穏やかに笑った。

「ハル、これからな、もっとすげぇぞ。」

「これからもっと?」

「花火だよ。今日、ホントは花火大会、行きたかったんだろ?」

“行きたい”とリュウには言わなかったのに、本当は行きたいと思っていた事を言い当てられて、ハルはバツが悪そうに視線を泳がせた。

「あ…。うん…せっかくタクミさんが教えてくれたけどハルは人混み苦手だし、まぁいっかーって…。」

「嘘つけ。オマエいつから人混み苦手になったんだよ。オレに気ぃ遣ってんだろ?」

「だって…。ハルといたら、ジロジロ見られるでしょ…?」

リュウは、うつむくハルを後ろからそっと抱きしめた。

「バカ…オレの事ばっか気にして我慢してんじゃねぇよ。」

夏の夜風がハルの頬を撫で、リュウの前髪を揺らした。

「タクミが教えてくれた場所ほど近くへは行けねぇけどな…。ここから見えるんだ。みんな近くまで見に行くから、今日は人もいないし…。ここなら一緒にゆっくり見られるだろ。」

その時、花火が打ち上げられ、夜空を彩った。

いくつもの明るい光が、宵闇の中のハルの顔を照らす。

「わぁ…キレイ…。」

「…ハルもな。」

リュウはハルを背中から抱きしめながら、花火に照らされたハルの頬にキスをした。



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