幸せの定義──君と僕の宝物──
病院に着いて内診を受けると、レナが思っていた通り陣痛が始まっているのでこれからお産になると山田先生が言った。

分娩前の処置を終えたレナは、案内された病室のベッドに横になり、お腹にモニター機器のパッドをつけられた。

ハルはどうしていいのかオロオロしている。

レナは、マユの出産に居合わせた時の事を思い出して微笑んだ。

(マユもあの時、こんな感じだったんだな。)

「ハルちゃん、落ち着いて。とりあえず座ろうか。」

ハルはレナに言われた通り、ベッドのそばにあった椅子に腰掛けた。

「ごめんね、まさか本当にユウがいない時に陣痛が来るなんて…。」

「いえ…。何かハルにできる事があったら、なんでも言って下さい!」

「ありがとう。心強いな。じゃあ…ユウにメール送りたいから、スマホ取ってくれる?」

ハルはバッグのポケットから取り出したスマホをレナに手渡した。

“ライブ終わったらここに電話して。”

レナは短い文章と病院の電話番号を打つと、スマホをハルに手渡した。

「病院の中からはメール送信できないんだ。ハルちゃん、悪いけどそこの突き当たりからベランダに出て、メール送ってくれる?」

ハルはレナからスマホを受け取り、病室を出てベランダに向かった。

ベランダに出て一人になると、急に不安が込み上げる。

(どうしよう…ハルじゃなんにもできない…!どうしよう、とーちゃん…!!)

ハルはレナのスマホからメールを送った後、リュウにメールを送った。


“どうしよう。
レナさんの陣痛が始まった。
ハル、どうしていいかわからない。
どうしよう、怖いよ、とーちゃん。”



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