幸せの定義──君と僕の宝物──
それから`ALISON´は、発売されたばかりの新曲をステージで演奏した。

`ALISON´の演奏に聴き入っていると、レナのお腹の中で赤ちゃんがいつもより活発に動いた。

まるでこの子も喜んでいるみたいだと思いながら、レナは優しくお腹を撫でる。

レナがステージの上でギターを弾くユウにテレビ画面越しに見とれていると、照れ屋であまりカメラ目線が得意ではないユウが、珍しくカメラを見て笑い、微かに口元を動かした。

(あっ…ユウ、今…“好きだよ、レナ”って言った…。)

ユウが病室を出て行く時に“テレビで見てて”と言っていた事を思い出し、ユウはいつもどこにいても想ってくれているんだなと、レナは思わず口元をゆるめた。


他の人にはきっと読み取れない、ユウの口元の微かな動きも、レナにはわかる。

ユウもまた、同じようにレナの口元の微かな動きで、レナが何を言っているのかがわかる。

レナが精神的なショックから失声症を患った時には、ユウはいつも声の出ないレナの言葉をそうやって読み取ってくれた。

つらくてどうしようもなかった時も、“どんなレナでも愛してるから一緒にいよう”と言って献身的に支えてくれたユウは世界一の夫だと、レナは心から思う。

(ユウは昔から、いつも私の事を一番に考えてくれるんだよね…。ホントに優しいな…。)


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