幸せの定義──君と僕の宝物──
`ALISON´の演奏が終わり、テレビ画面には`ALISON´のメンバー全員が出演した自動車メーカーのCMが流れている。

レナはそのCMを楽しそうに眺めた後、ふと過去を振り返った。

(そう言えば、去年の春のライブツアーの時にもあったっけ…。)

結婚してまだ間もない新婚の頃、レナは雑誌の`ALISON´ライブツアー密着取材のカメラマンとして、ライブツアーに同行していた。

ステージでギターを弾いていたユウが、ステージ前でカメラを構えていたレナに向かってピックを投げて“好きだよ”と言った事があった。

思えば、再会して間もなくツアーに密着取材で同行した時も、ユウはアンコールでひとりステージに立って、声には出さず“レナが好きだ”と言った。

(あの時は…私はまだユウの気持ちにも、自分の気持ちにも気付いてなくて…と言うか…むしろ気付かないように、目をそらしてたのかも…。)



その時のレナには婚約者の須藤がいた。

10年ぶりに再会したユウには、レナの知らないたくさんの女の子がいて、信じたいと思うほど裏切られ、ユウはもう自分の知っているユウじゃないのかも知れないと思っていた。

ユウへの気持ちに気付いた時には、もう何もかも遅すぎると、その気持ちを素直に伝える事もできなかった。

(それでも今は…ユウと結婚して…一緒にいられて、幸せだな…。)



< 21 / 241 >

この作品をシェア

pagetop