幸せの定義──君と僕の宝物──
数日後。

`ALISON´のメンバーがスタジオでライブ向けのアレンジをした曲を練習していると、そこに珍しくヒロが訪れた。

ヒロはブースの防音窓ガラス越しにメンバーの顔を眺め、ニヤリと笑いながら顎をさする。

(揃いも揃って幸せそうな顔しやがって…。)

新婚のハヤテと子供が生まれたばかりのユウはともかく、いつもはどこか冷めた遠い目をしていたトモとリュウまで、優しく穏やかな顔をしている。

くせ者のタクミは相変わらずではあるが、それでもどこか幸せそうだ。

(なんだなんだ?安住の地でも見つけたか?)


その曲が終わった時、ヒロは分厚いドアを開けてスタジオに顔を出した。

「よぅ、いい調子だな。」

「あっ、ヒロさん…お疲れ様です。」

みんなはヒロに頭を下げながら、何か特別な用でもあっただろうかと考える。

「ユウ、生まれたんだってな。レナも子供も元気か?」

「ハイ、おかげさまで。」

ユウはにこやかに頭を下げた。

「初孫の顔、見てぇな。レナと子供のツーショット、送れよ。」

「レナもですか?」

「いいじゃねぇか。かわいい娘の元気な顔も見てぇんだよ。」

「はぁ…。わかりました。」

ユウはポケットからスマホを出し、レナとユヅルのツーショット写真を何枚か選んでヒロのスマホに送信した。

「おっ…いい男だな。名前は?」

「結ぶに弦でユヅルです。」

「なるほどな。大人になったらユウのライバルになったりしてな。」

ヒロは楽しそうに笑って、スマホをポケットにしまった。

「あのー、おじいちゃん。」

タクミが笑って手を挙げた。

「なんだ、タクミ。おじいちゃんはやめろ。」

「ヒロさんの初孫、ユウんちのユヅルじゃないんですけど。」

「はぁ?なんでだよ。ハヤテはまだ新婚で子供はいねぇだろ?一体誰の子だよ。」



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