幸せの定義──君と僕の宝物──
1週間後。

リュウは、ハルを車に乗せて実家に向かっていた。

夏休みも終わりに近付き、翌日はハルが登校日なので、実家に戻る事になったのだ。

「なんか、あっという間だったな…。」

「いろいろあったけどな。」

「楽しかったよ。とーちゃんとこんなに一緒にいられたの初めてだね。」

「ロンドンに行く前は一緒に住んでたんだけどな。ハルは小さかったから覚えてねぇか。」

「子供の頃の話は別だもん。」

ハンドルを握るリュウの横顔を見ながら、ハルは少し寂しそうな顔をした。

「明日から…また離ればなれになるんだね。」

「できるだけ帰るようにするから。そんな寂しそうな顔すんな。」

リュウは左手でポンポンとハルの頭を優しく叩いた。

「今日は夜までいられる?」

「そうだな…。やっぱ今夜は実家に泊まって明日の朝帰るか。明日の仕事、夕方からだし。」

「じゃあ、もう一晩一緒にいられるね。」

「でも今日は自分の部屋で寝ろよ。」

「やだ、とーちゃんの部屋で一緒に寝る。」

「仕方ねぇな…。一緒に寝るだけだからな。」

「ふーん…?昨日はしてくれたのに…。ママに内緒でもダメ?」

「絶対すぐバレるな…。」





夕べ二人は、またしばらく離ればなれになるのが寂しくて、片時も離れる事を惜しむように、ベッドの中でピッタリと寄り添っていた。

指を絡めて見つめ合い、何度もキスをした。

「とーちゃん、ハルがいないと寂しい?」

リュウの腕の中でハルが尋ねた。

さらさらとハルの髪を梳きながら、リュウはハルのいない毎日を想像した。


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