幸せの定義──君と僕の宝物──
トモが何度目かの深呼吸をした時、アユミが帰ってきた。

「ただいま。」

「おかえり…。マサキ行った?」

「うん、そこのスーパーでプリンとゼリーの詰め合わせ買って持たせた。」

「そう…。なんか…アユちゃん、ホントにお母さんなんだな…。」

「そうだよ。」

アユミは笑ってバッグに財布をしまうと、マサキの使っていたグラスをキッチンにさげた。

「今日の晩御飯はどうしようかな…。マサキも帰って来ないし…。」

グラスを洗いながらそこまで言って、アユミはハッとして手を止めた。

そして、何事もないふうを装って、グラスの泡をすすぎ落とした。

「トモくんの好きな物、作ろうかな。何がいい?」

「あ…えっと…オムライス…かな…。」

「トモくん、昔からオムライス好きだよね。そう言えば…初めてのデートの時も、オムライス食べたっけ。覚えてる?」

「覚えてるよ。めちゃくちゃドキドキしながら食べてた。」

「ふふ…私も。味がわからなくなるくらい緊張してた。」

遠い日の初めてのデートを思い出して、二人はおかしそうに笑った。

「でもオレは、アユちゃんの作ったオムライスが一番好き。」

「ホント?じゃあ、今日の晩御飯はオムライス作るね。」

「うん。アユちゃん…。」

「ん?」

トモは立ち上がって、キッチンに立つアユミを後ろからそっと抱きしめた。

「二人きりになるの…久しぶりだね。」

「なんか…照れ臭いね…。」

恥ずかしそうに微笑むアユミの頬に口付けて、トモはアユミの耳元で囁く。

「今日…泊まってもいい…?」

「うん…。」



< 227 / 241 >

この作品をシェア

pagetop