幸せの定義──君と僕の宝物──
その夜。

トモは初めてのデートの時のようにドキドキしながら、アユミの作ったオムライスとサラダを食べた。

久しぶりに二人で囲む夕食は言葉少なくて、どこかぎこちない。

トモは何か話題はないかと考える。

(あっ、そうだ…。)

「この間、うちのバンドのユウに子供が生まれたんだ。」

トモがそう言うと、アユミは少しホッとしたように顔を上げた。

「そうなんだ。男の子?女の子?」

「男の子。名前、ユヅルって言うんだって。ユウがギタリストだからかな。」

「カッコいいね。」

「奥さんが産気づいた時、うちのバンド地方のライブイベントに行ってて…ユウが戻るまで、ハルが奥さんについてたって。」

アユミが返事をしてくれる事にホッとしてどんどん話しているうちに、その話題にハルが出てくる事に気付いてから、トモは内心しまったと思った。

「ハル?」

「あ…えっと、リュウの姪っ子のハル。」

「ああ…ハルちゃんね。お店に髪切ってもらいに行った時に会ったっけ…。すごくかわいかった。あの時はまだ2歳だって言ってたけど、大きくなったでしょう?」

「うん。今、15歳で高1だって。」

トモは何気ないふうを装って返事をした。

「ハルちゃん、宮原くんの事が大好きだったよね。結婚しようって毎日言ってたんでしょ?」

「うん。ああ…そうだ。ハルの長年の夢、何年後かには叶うよ。」

「え?」

「リュウ、ハルが大人になったら嫁にもらうってさ。」

トモはアユミがどんな反応をするのか少し不安になりながらそう言った。



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