幸せの定義──君と僕の宝物──
それから入浴を済ませた二人は、アユミのベッドに一緒に横になった。

二人きりになるのをあんなに喜んでいたはずなのに、プロポーズの返事を保留にされてから、トモは少し落ち込んでいた。

(マサキももう大きいし、仕事もあるし…。いろんな環境が変わる事考えたら結婚なんて…アユちゃんにとっては今更なのかな…。)

一緒に横になっても上の空で黙り込んだままのトモの手を、アユミはそっと握った。

「トモくん…。」

「ん…何?」

「今すぐ決める事はできないけど…トモくんと一緒になりたいって言う気持ちはあるから、そんなにがっかりしないで。」

「うん、そっか…。アユちゃん…。」

トモはアユミの手を握り返して、もう片方の手でアユミを抱き寄せた。

「好きだよ。」

「私も…トモくんが好き。」

「今だけは…オレだけのアユちゃんでいてくれる?」

「うん…。」

トモはアユミの唇にゆっくりと唇を重ねた。

唇を押し当てるだけの少し長いキスの後、トモは唇を離してアユミを抱きしめた。

「ヤバイ…。オレ…すげぇ緊張してる…。」

「私も…すごくドキドキしてる…。」

「…もっとドキドキする事、しようか。」

「なんか恥ずかしい…。」

もう一度キスをして、トモはアユミのパジャマのボタンをゆっくり外し、唇でアユミの柔らかい肌に優しく触れた。

「アユ…もう一度、アユをオレだけのものにしてもいい?」

「うん…。」

あの頃よりも大人になった二人は、何度も甘いキスをして、久しぶりに重ね合ったお互いの肌の温もりを確かめるように抱き合った。

トモは、一度はあきらめた大切な人を再びこの手に抱く幸せを、全身で感じた。

「アユ…愛してる…。もう絶対離さない…。」

アユミは、別れてからもずっと想い続けたトモの愛を、体いっぱいに受け止めた。


二人は離れていた長い時を埋めるように何度も求め合った後、幸せな気持ちで寄り添って眠りについた。





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