幸せの定義──君と僕の宝物──
リュウは薄暗い部屋の中で、愛し合った後、裸のまま隣で寝息をたてているハルの寝顔を見つめていた。

(気持ち良さそうに寝てるな…。)

ハルのはだけた胸元に布団をかけ直し、愛しそうに頭を撫でた。

少し前まではハルの事をまだまだ子供だとか、ハルに何されても欲情なんかしないと思っていたのにと苦笑いしながら、リュウはハルの頬に口付ける。

(ゆっくり大人になれって言ったくせに、ハルが大人になるのが待ち遠しいとか…。矛盾してるな、オレ…。)


“ハルが大人になったら”と言う言葉は、リュウが今のハルにしてやれる精一杯の不確かな約束だった。

リュウにとっても不確かなその約束は、ハルが大人になるまでに他の誰かを選ぶ時がくるかも知れないと言う不安をはらんでいる。

それでもリュウは、ハルが言ってくれた言葉を信じて、ゆっくり待とうと思う。

こんなにも愛してくれた人はいなかった。

こんなにも愛しいと思った人はいなかった。

すぐそばにいたのに、それまでの関係を壊すのが怖くて、ずっとハルの気持ちに気付かないふりをしていた。

リュウは、自分よりずっと歳下のハルにたくさんの事を教えられていると気付いた。

生まれて初めて大切な人を失う怖さを知った。

だから、この手でずっと守れるように、ずっと愛し続けられるように、自分の弱さから目をそらさず前を向いて生きて行こうと、リュウは思った。


「ハル…待ってるからな…。愛してる…。」

リュウがハルの耳元でそっと囁くと、ハルの寝顔が、幸せそうにほころんだ。




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