幸せの定義──君と僕の宝物──
「うん。私は子供の頃から両親があんまり一緒にいてくれなくて、ずっと一人で寂しかったから…ハヤテと一緒に家族が作れるんだって思うと、すごく嬉しい。」

ロンドンに行く前、メグミはいつも家に一人ぼっちで、寂しさを埋めるために背伸びをしていた。

一緒に過ごした帰り際、いつも寂しそうに手を握ってハヤテを引き留めていた、若かった日のメグミを思い出し、ハヤテはいつもそうしていたように、メグミを抱きしめて優しく頭を撫でた。

「今は寂しくないだろ?オレがいるし…。」

「来年の春には3人家族になるもんね。」

「メグミにまた会えてホントに良かった…。」

ハヤテは愛しそうにメグミを見つめて、優しく唇を重ねた。

「来年の春は、3人で見られるかな。」

「朧月夜?」

昔、付き合っていた頃は、“春になったら一緒に見よう”と約束をしていたのに、その約束は2度とも果たされる事はなかった。

今年の春にメグミと再会して、やっと二人で一緒に朧月を見る事ができた。

「離れてた時は毎年一人で見てメグミの事考えてたけど…今年はメグミと一緒に見られて幸せだって思った。」

メグミはハヤテの手を握って、重ねた手をお腹にそっと添えた。

「きっと来年は、もっと幸せだね。」

「来年も、その先も、ずっとな。」




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