幸せの定義──君と僕の宝物──
タクミからのメールを受け取ったユウは、じっくりとその歌詞を読んだ後、感慨深そうにため息をついた。

(なるほどなぁ…。だから“はる”を待つひとなんだ…。)


春になったら子供が生まれるハヤテ。

春になったら結婚するトモ。

大人になったハルと一緒になれる日を待っているリュウ。


切なさに胸を焦がした初めての本気の恋や、大切な人との別れを経験して大人になった。

叶わない恋に胸を痛めた長い日々や、いつまでも想い続けた大切な人との再会。

ずっと想い続けてくれた大切な人と共に未来を生きる幸せ。


3人の事を書いたと思われる詞の内容は、ユウ自身にも重なる。

(みんな、いろいろあって今があるんだな…。この先もいろいろあるんだろうけど、歳取って振り返った時に幸せだって思えたら、それで全て善しって事か。)

ユウは、ユヅルと一緒に眠っているレナを見つめて、優しく微笑んだ。

小さい頃からずっと好きだった幼なじみのレナが、今は愛する妻としてそばにいる。

感情表現が苦手で泣いたり笑ったり怒ったりしなかったレナが、ユウの前では泣いたり怒ったり甘えたり、そしてユヅルを抱いて母親の顔で穏やかに笑う。


(オレの宝物だな。)


ユウは、ヘッドホンをしてギターの弦をはじきながら、レナと過ごしてきた日々や、レナとユヅルと共に生きるこれからの未来に想いを馳せる。



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