幸せの定義──君と僕の宝物──
マンションに戻ったユウは、手探りで真っ暗な部屋の灯りをつけた。

(あー…レナはいないんだな…。)

今朝までレナと一緒にいた部屋が、ひとりだとやけに広く感じる。

ユウはシンクに置いたままだった朝食に使った食器を洗って、ビールを飲もうと冷蔵庫のドアを開けた。

冷蔵庫の中にはレナが買ってきた食材が所せましと詰め込まれていた。

(冷凍できる物は冷凍して…他の物は使わないとな…。今日はもう料理するような時間でもないし、明日にするか…。)

ユウは調理せずに食べられる物はないかと冷蔵庫や野菜室をゴソゴソあさって、トマトとハムとチーズを取り出した。

トマトをかじり、ハムとチーズをつまみにビールを飲んだ。

(はぁ…。味気ねぇ…。)

ひとりの部屋はやけに静かで、いつもは美味しいビールも今日は味気ない。

こんな日が4週間も続くのかと、ユウは大きなため息をついた。

(10年間もレナと離れてたなんて、いまだに信じられないな…。)

気が付けばレナはユウにとって、なくてはならない存在になっていて、毎日一緒にいるのが当たり前になっている。

ライブツアーなどで地方に行く時とは違って、電話で声を聴く事もメールする事もできない。

ただただ、レナとお腹の子の事が心配で落ち着かない。

(クヨクヨしたってしょうがないな。こんな時こそオレがしっかりしないと…。明日は本でも買って行くか…。)

明日は昼前から雑誌の取材が入っている。

それが済んだら、できるだけ長くレナについていてやろうと思いながら、ユウはビールを飲み干した。



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