幸せの定義──君と僕の宝物──
レナは夕べの出来事をユウに話すと、恨めしそうに左腕の点滴針を眺めた。

「張りが治まらなかったら、この点滴ずっとつけとかなきゃいけないみたい。」

「24時間で終わるんじゃないの?」

「違うの。場合によっては36週目に入る頃までって言われた。もちろん、張りが治まれば外してもらえるんだけど…。」

「そっか…。不便だな…。」

ユウは元気のないレナの頭を優しく撫でた。

「レナ、今日は本買ってきたよ。」

ユウが紙袋から本を取り出すと、レナは嬉しそうに笑った。

「ありがとう。もう退屈で退屈で…。」

ユウが買ってきた3冊の本の中には、高校時代からの二人の親友で作家の三浦 慎也の新刊もあった。

「あっ、これ三浦くんの新しい本だね!!読んでみたかったんだ。」

「よかった。ちょうど平積みの中にシンちゃんの本見つけたから。」

シンヤの小説と、シンヤの妻でユウとレナの小学4年からの親友の麻由が編集に携わっているマタニティー雑誌、それから最近話題になっている小説もある。

「レナ、ずっと忙しくてゆっくりする暇なかっただろ?産休に入っても家の事とか頑張ってたし…。いい機会だから、読書でもしてゆっくり過ごしな。安静にしてるしかないんだしさ。」

「そうだね…。赤ちゃん生まれたら、ゆっくり寝る暇もないって、マユも言ってたし。」

「欲しい物あったら、また買ってくるから。」

「うん。」


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