幸せの定義──君と僕の宝物──
ユウは、母親の直子が実は本当の親ではないと知った時の事を、ぼんやりと思い出した。

「本当の母親は今頃どこでどうしてるのかなとか、なんで赤ん坊だったオレを置いて出てったのかなとか…いろいろ考えたな。しかも離婚したって聞かされてた親父が実は死んでたとか…衝撃の事実ばっかりだった。」

「直子さんは、血の繋がってないユウを女手ひとつで育ててくれたんだもんね。」

「だから、隠されてたのはショックだったけど何も言えなかったんだ。おふくろが苦労して育ててくれたのはわかってたしな。」

レナは、以前週刊誌に酷い記事を掲載されてユウと別れた時に、何年ぶりかに会った直子が言っていた事を思い出した。

「事実を知ってもユウが何も言わなかった事…直子さんは少し寂しかったみたいだけどね。」

「そうなのか?」

「うん…。ユウ、週刊誌にいろいろ書かれたでしょ?あの時、私は初めてユウの本当の両親の話を聞いたんだけど…。直子さん、ユウの記事を読んだって。ユウは愛情に飢えてたのかなとか…もっと分かりやすくユウを愛してあげれば良かった、って言ってた。」

いつもは明るくサバサバしていて、あっけらかんと笑っている直子の本心を初めて知り、ユウは少し胸が痛んだ。

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