幸せの定義──君と僕の宝物──
まだロンドンに行く前の若かりし頃、二人には初めて本気で恋をした女の子がいた。

トモには初めて本気で恋をして、初めて自分から告白して交際を申し込み、付き合っていた彼女がいた。

リュウも偶然再会した小学校の同級生だった彼女に初めて本気の恋をした。

その彼女が、実はトモの付き合っていた彼女だとは知らず、大学生の優しい彼氏がいると言う彼女に、どうにもならない片想いをしていた。

彼女もまた、リュウとトモが中学時代からの親友でバンド仲間だとは知らずに、トモの事を想いながらも、トモにないものを持っていたリュウに惹かれた。

結局、彼女との恋に流され周りが見えなくなってしまったトモとの付き合いに不安を感じ迷い始めた彼女は、リュウと一夜の過ちを犯してしまった罪悪感からトモと別れ、リュウを選ぶこともできなかった。

彼女の言っていたその相手がリュウだと言う事実をトモが偶然知ったのは、彼女がトモの前から姿を消し、リュウがロンドンに行った後の事だった。

その後トモもヒロに声を掛けられロンドンに渡り、リュウと再会した。

リュウが何も気付かず本気で彼女を好きだった事だけをさりげなく確かめたトモは、その事実を自分だけの胸に閉じ込めた。

そして11年の月日が流れ、ユウの結婚式の後、リュウは初めてトモの口からその事実を知らされたのだ。




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