幸せの定義──君と僕の宝物──
トモは責めるどころか、ロンドンで再会してすぐに、リュウの好きだった相手が自分の付き合っていた彼女だと、リュウに気付かれないようさりげなく確かめると、“彼女の事、ホントに好きだった?”“今でも彼女の事が好きか?”とリュウに尋ねた。

リュウがそれを認めると、事実は何も言わず、ただ、“そうか、オレもだ。”と言っただけだった。


(オレって鈍いのか?なんでもっと早く気付かなかったんだろう…。せめて…あの夜より早くオレが気付いてたらトモは…。)

今となってはどうしようもない事ばかりが、リュウの頭の中をぐるぐる巡る。

親しいからこそ、そばにいるからこそ、相手がどこの誰だとか、余計な事は聞かなかった。

本当にどうでもいい事ばかりを話して、初めて本気で恋をしているトモの邪魔はしないでおこうと思っていた。

(それなのに、結局二人の仲を壊したのはオレだ…。)


“彼と、別れた。”

“彼の事、ホントに好きだった…。”


そう言って彼女は、静かに涙を流した。

彼女の涙を思い出すと、今でも胸が痛む。

せめてもの罪滅ぼしに、何か自分がトモのためにできる事はないだろうか?

今はもう、どこでどうしているのかさえわからない彼女の事が忘れられないでいるトモのために、できる事があるのなら…。

(今更って感じかも知れねぇけど…。今の現実を見れば、トモも昔の恋を引きずる事はねぇのかも…。)




< 37 / 241 >

この作品をシェア

pagetop