幸せの定義──君と僕の宝物──
それから1週間後。

仕事から帰宅したリュウは、自宅のポストに懐かしい相手からの手紙を見つけた。

(ユキ…?)

差出人の名前は雪渡 愛弓(ユキワタリ アユミ)。

リュウの中学時代のヤンキー仲間だ。

小学生の時、クラスに“アユミ”と言う名前の女の子が3人もいた。

そのうちの一人がユキだった。

ユキワタリと言う長い苗字が面倒で、リュウが“ユキ”と呼び出してからは、みんなが彼女を“ユキ”と呼び始めた。

(なんだ?手紙なんて珍しいな…。)

封を開けると、それは小学校6年生の時のクラスの同窓会の案内状だった。

担任だった山崎先生が定年を迎えるので、地元に残っているメンバーが有志となって、感謝の気持ちを込めて同窓会を開く事にしたらしい。

(そっか…。山崎、もう定年か…。)

小学校時代から悪ガキだったリュウは、山崎先生によく叱られた。

とても愛情が深く、厳しくも優しい先生だった事は、リュウもよく覚えている。

案内状には、ユキからの直筆のメッセージが添えられていた。

リュウの活躍をテレビなどで見て、きっと忙しいだろうと、幹事のメンバーが誘うかどうしようか迷っていたらしい。

それを知ったユキが、ダメ元で誘ってみようと実家にいるリュウの姉のルリカから住所を聞いて、案内状を送ってくれたのだそうだ。

同窓会の日が迫っているから仕事の都合がつくかどうかはわからないけれど、来てくれると嬉しい、返事は電話でしてと結ばれていた。

(小6の同窓会か…。20年以上も前のクラスメイトなんて、顔見てわかんのか?)

案内状を見ながら、リュウはタバコに火をつけた。

(あ…もしかして…。)

リュウは急いでスケジュールを確認して、ユキに電話を掛けた。

「あっ、ユキか。同窓会の案内状届いた。それでさ…。」



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